クリエイターズシンポジウム@浜松の開催情報とお申込みはこちら!
http://atnd.org/events/26479
第1回 「クリエイターとボカロP、ムーブメントの現在とこれから」
今回のシンポジウム第2部「クリエイターズミーティング」にご登壇いただくデッドボールPにインタビューさせていただきました。
デPとしての活動から、ボカロPと呼ばれるクリエイターの現在についてお話を伺いました。
―今回はよろしくお願いします。
デP: よろしくお願いします。
―昨年11月に音楽の創造都市浜松をPRする国際会議があり、そこのサブイベントとしてデジタルサウンドシンポジウム@浜松を開催しました。そこで今生まれてくる音楽の話ということでデジタルサウンドを中心に議論が行われたのですが、そこの登壇者の
牧村先生がおっしゃったのが、ボカロのムーブメントはフォークソングのムーブメントと似てるなという話がとても興味深かったです。
デP: と、いいますと?
―音楽やったことない人が好き勝手に曲ができる、音楽をやった人のクオリティの高い音楽が聴けるというところが似ているというお話でした。
デP: なるほどそういう意味ですか。
―はい。市場がない分、表現が自由で、混沌としているけどこれから生まれる面白さがあるなと感じました。今のムーブメントを見るとこの状況って同人音楽がなかったらそこには至らなかっただろうと感じています。
デP: 活動資金源としての同人は確かに必要ですが、マーケットとしての同人は必ずしもCDの即売会である必要がなくて、ユーザーがPの顔を見れて会話できる場所があれば同人でなくてもよかったのではと思います。現状同人即売会以外そういう場所がないので結果的に同人に落ち着いたというところでしょうか。
―なるほど。えっと、そのシンポジウムではそこらへんの話になり、予想通りというか、やっぱり、クリエイターの権利、権益の話になり、
デP: 俺の出番ですねw
―あ、そうです!その通りです!今回のご登壇に先立ち、こちらで簡単にデP様の活動についてまとめたのですが
デP: おお!
―同人音楽→ミク→デP誕生→削除問題→ミクFesでの伝説の舞台→著作権関連の発言、という流れかと思います。この中で、同人音楽からデPになる間をみると、デPにとってボカロというのは刺激的な楽器だったのでしょうか?
デP: 楽器というかですね 俺にとってのミクちゃんは楽器とキャラクターの中間の存在でありまして、魅力的なのはもちろんそうなのですが、楽器としてよりキャラクターとしての魅力が勝っているんです。DTMのツールとしては斬新ですが使い勝手はいいとは言えませんし、その面ではGUMIとかV3の方が全然いいです。俺にとってはボカロが刺激的だったのではなく、初音ミクが刺激的だったんですね。
―ニコ動という場も刺激的でしたか?
デP: そうですね、ネットの回線速度はあがっても結局ネトゲしか遊び場がなかった時期でしたし。また、youtubeは英語英語しててとっつきづらい部分もありましたし、時代とかみ合ってましたよねニコ動は。歌詞が聞き取りづらいボカロ+動画orコメントで歌詞がわかるという環境のかみ合わせのよさというかなんというんでしょうか。コンテンツと場所のシナジーがお互いに強くてとか言えばいいのかな?w
―でも、これは現在も続いているんでしょうか?
デP: 現在ではちょっと状況がかわってまして、ニコ生の影響やコンテンツ力の低下など、色々な原因があって視聴者の年齢層が今ものすごく下がってるんですね。で、そういう視聴者は何を求めるかというと完成されたコンテンツを求めるので、ムーブメントの当初にはなかった「歌が下手なくせにうpんな」とか「こんな曲うpんな」的な風潮も強く見られるわけです。
―はい。
デP: で、完成されたコンテンツってのがなんなのかというと、クオリティーの高い楽曲ではなくて、クオリティーが高そうな楽曲+完成度が高そうなPV の組み合わせなんですね。そこから考えると、もうボカロである必要性は動画とコンテンツのシナジーにはあまりないんですよね。
―そ、そうなんですか。
デP: 現に歌ってみたの動画の方がのびてますし人気ありますよね。でもたまたま歌ってみたとボカロが同じ土俵で生まれたものだったから歌ってみたの人がなんとなくボカロを歌ってるという感じで、もし歌ってみたがボカロ曲以外の曲主流になってしまったとしたら加速度的にボカロ関連の動画の伸びは落ちると思いますよ。
―でも、ボカロにはそれ以外の要素がありますよね?MMDとか、キャラクターの魅力とか。
デP: もちろんそうです、なんで一元的に「もうボカロはだめじゃーー」って言うわけじゃないんですが、動画+コンテンツの相互シナジーという面においては意味合いが変わってきてるよーということを言いたいのです。
―わかりました。現実そうですね。最近特にですが、Pさん自体について語られることが少なくなってきていると感じます。
デP: それはあるかもしれませんが意外とそうでもないかもしれませんよ?最近見られる傾向として、評価された曲があったら、それの劣化コピーを量産されて、それが聴いている人にウケてしまう。劣化コピーからは当然Pの個性なんて出ないわけで、しかもそれが一番目立つムーブメントになってしまったせいで、Pの個性がないように見えるのかもしれません。
―なるほど
デP: あと、再生数を競う、再生数が多いほうが偉いしかっこいい、再生数が多い曲を作りたい、そういった再生数を求めるということは市場のニーズの一番大きな声に合わせて曲を作るということになるんですよね。具体的にいうと、歌詞の内容はちょっと鬱っぽくてダークファンタジーで人が死んだりして、曲調はちょっと早めのロックといった特徴が見られます。
―確かに多いですね
デP: 要するに再生数至上主義からは個性は生まれにくいし二番煎じ曲も多く生まれてしまう、だからこそ多くの人が離れて行ったし今Pの個性がないように見える。でももちろん、みんながみんな個性がないというわけではないと思います。
―そこで伺いたいのですが、Pさんがなんとなく分化したなと。3つなんですが。
デP: ほう!
―一つが、もうやめちゃったPさん、2つ目が顔は出さないけど継続して曲を上げているPさん、3つ目がアイドル化したPさん、かなと。
デP: うーん、Pというのは変態だらけですので、むりやり3分化とかしようとするとどうしても違和感が残るというか。まぁ当然といえば当然のわけかたなんですが。
―このわけ方をした理由なんですが、私のような古参のミク厨にはPさんが顔出しできる状況って信じられないんですね
デP: その点はPに関係ない場所な気がするんですよね。ニコ生とかtwitterの流行で、個人情報に対する意識というか匿名文化の必要性といいますか、要するに「個人情報や顔が出ると何が困るのか」ということを考える前にそういったツールが存在するので、結果として「個人情報?保護?なにそれ?顔出せばいいじゃん」という世間になってきてるorなってしまったと思うのですよ。
―なるほど
デP: という前提で、人気欲しいPさんはチヤホヤされたいんですよね。で、ちょっとボーマスとかで顔をだすとキャーキャー言われるわけで、おお俺モテるやん、これはきもちいい、となって顔出しNGという意識がなくなるという流れだと思います。
―クリエイターって=職人のような見方があると思うんです。だからですかね、僕には凄く意外でした。
デP: 俺もクリエイター=職人派なんですが、ニコ動ではそうでないのかもしれませんね。これは俺の予想にしかならないんですが、今までポピュラー音楽の歴史のなかで作曲者に光があたったことって非常にめずらしいケースなので「○○Pの曲だ!」「○○P好き!」という流れになると、人は調子に乗って顔を出してしまうものなのかもしれません。
―デPは変わらない気が・・・
デP: 俺はデPなんでwwww
―あぁ、デPでしたw
デP: 助かりますw
次回のインタビューでは「クリエイターから見た著作権、デPから見た著作権」というタイトルで、一クリエイターの立場から著作権関連の発言をされているデッドボールPのスタンスや考えについて伺ってみます。