前回は難波さんの心象風景としての浜松について語っていただきました。今回は活動の場と難波さんの音楽についてお話を伺いました。作曲家としての難波さんの思いが読まれた方に少しでも伝わればと思います。
第2回 ―活動の場、インスピレーションの場―
―仕事としての音楽を意識したのは、いつぐらいのことなんですか?
難波さん:中学生ですかねえ・・・
―早いですね!その頃は浜松にいらっしゃった?
難波さん:ええ。
―今は浜松から離れて創作されている。浜松で創るというのはやっぱり難しいですか?
難波さん:そうですね・・・・やはり、仕事がある土地でないと生活が出来ませんからね。残念ながら、そちら方面では仕事がまったくないのですw
―そうですよね。でも難波さんを知ってる方は、とても大事に思ってられますよ。
難波さん:環境が良い事も重要ですが、僕は演奏家や歌い手さんと密にコラボレーションしながら作品を作るタイプなので、そういう人たちと仕事がし易い環境も大事なんですよね。 結局は、音楽は演奏されなければ意味がないものなので、よりおおくの演奏機会が得られる場所に居るのも大事なことの様な気がします。 浜松の方達に、お前の曲がもっと聞きたいよって求められるようにならなきゃいけませんね。そうなれれば、必然的に浜松での仕事も増えてゆくと思います。
―周りの関係者との密なコミュニケーションというのは、オンラインでは難しいですか?今はオンラインで楽曲のやりとりというのもよく行われてますし。
難波さん:無理ですね。音は生き物ですし、ポッシビリティの追及は実際の現場でないとできないものですから。生音を知っているのといないのでは、出来る作品に大きな差が出ます。実際に演奏家の中に、身をおいて、実験できる環境がととのっていないと、ティピカルな世界にドグマを作って抜け出せなくなる可能性があります。
―それは創作におけるトライ&エラーが許される場ということですか?
難波さん:うーん・・・自分の言葉で対話する場、ですかね。音も会話も、オンラインと生ではニュアンスが全く変わってしまいますから。
―音楽もコミュニケーションの一つということでしょうか?
難波さん:そうですね。オンラインにはオンラインの良さはもちろんあるし、便利ではあるんですが、会って話したほうが伝わり易い、と経験上思います。
―浜松出身であるということは先程の話にも出ましたが、創作におけるインスピレーションってそれ以外にはあります?
難波さん:文学と自然です。
―これは意識的に取り込もうとする結果、音楽になっていく対象なのでしょうか?
難波さん:小さい頃から、文学と自然が好きで、ソコから得る霊感が創作のみなもとだから、ですね。 僕は幻想小説が好きで。その小説に出てくる世界を頭の中に思い浮かべるのが好きだったんですね。その世界を、どうやったら皆に伝えられるかな?っって考えて色々やって見た結果、作曲が一番しっくりきたんですよね。
―なるほど。表現手法としての作曲に行き着いたんですね。
難波さん:そうです。
―自然と文学というのは、難波さんの中で更新されていくものなんですか?つまり、自然も文学も耐えることなく変化していく。ただ、こちらで意識すれば止めることもできる。留めるというべきか。
難波さん:芸術は時代と共に表現手段が変わってゆきます。 でも、伝えたいものの根本は変えちゃいけないと思うんです。僕は、幻想怪奇なものこそ美しいと思うので、死ぬまで幻想的な美しさを求めてゆきます。たとえば、乱歩の小説、例えば、深夜の森、月夜、その美しさは普遍だと思いますし、それを、自分が生きている時代の感性で作品として残してゆきたいんです。2011年に難波研って人間は、こんなことを感じていたんだよ、っていうのが未来の人にわかるような作品を書きたいですね。なんというか、未来の人の価値観で見ても、何かしらの意味を見出してもらえる作品を書きたいです。
―そろそろインタビューの核心に来た感じがします。他に何かあれば是非!
難波さん:・・・・ヲタです!
―今日はお時間いただきありがとうございました!
難波さん:こちらこそ有難う御座いました!!
難波さんとの出会いは、人からの紹介でした。今回デジタルサウンドシンポジウムのご登壇も快くお受けいただき、当日お会いできるのが楽しみです。ゲストの中では数少ない浜松出身の方なので、このインタビューでもそのあたりが色濃く出たかなと思います。
難波 研 (作曲家)
@kennamba http://soundcloud.com/ken-namba
1983年静岡県浜松市生まれ。作曲、音楽理論、日本伝統音楽、指揮、ピアノ、ハープシコード、サキソフォン等を学ぶ。1998年に「静岡の名手達」に選出され、以後国内に於いて著名な演奏家・団体によって作品が演奏されている他、海外に於いても作品が紹介されている。イタリア文化会館東京作曲コンクール第1位(2008/東京)、武満徹作曲賞第2位(2010) INTERNATIONAL COMPOSITION COMPETITION IIC MELBOURNE 2010 "UNIQUE FORMS OF CONTINUITY IN SPACE" (2010/オーストラリア・メルボルン) "JAPAN 2011"(2011/イタリア・ウディーネ)等、国内外のコンクールにおいて様々な賞を受賞する。近年は現代アート界との結びつきも強く、シュヴァンクマイエルトリビュート展への音楽の提供、写真家の小野塚映像作家の寺嶋真里、暗黒朗読俳優の常川博行、イラストレーターの今井キラらとコラボレーションを行う等ユニークな活動を展開中。ライトノベルからインスピレーションを受けた作品を多数発表する等、日本のカウンターカルチャーへの造詣が深い。新作舞台音楽作品(Music theater)を2012年に初演予定。