デジタルサウンドインタビュー ―倉庫番 最終回―

山森 達也

2011年11月12日 16:51

倉庫番さんへのインタビュー、最終回です。
人とデジタルサウンドについて語っていただきました。
シンポジウム当日はここらへんも絡めたポスターセッションを行うのであわせてご覧ください。


―地域資源としての「人」、状況としての「デジタルサウンド」―

―そうですね。ただ、浜松はまだ産業がある。デトロイト化していない。まだなんとかなると思うんです。

倉庫番さん:産業、と言うか「地域資源」って言うものを活かしていくのか?を本気で考え、実行することで独自性を保つ事ができると思います。これはあくまでも一般論ですが。浜松の場合は東海道の丁度ど真ん中ですし、東京や大阪からのアクセスもし易いですし、工業だけじゃなく多くの自然もある。この辺りをどうやって活かしていくかが今求められているって思うんですよ。

―この地域資源の中に「人」を入れたいんですよね。浜松の人が持ってるアイデアや技術、経験ってすごいんだっていう

倉庫番さん:経産省的には「人」は地域資源じゃないみたいなんですが、やっぱり「人」って言うのは重要なファクターであると思います。ただ、「人」って言うのは凄い難しいものなんですよね。
 参考:「地域資源」・・・http://j-net21.smrj.go.jp/expand/shigen/about/index.html (中小企業基盤整備機構)
 この「人」って言うのが実は一番難しい問題なんです。良くまちづくりで言われるのに「よそ者・バカ者・若者」が必要である、って言うのがあるのですが、この人的リソースをどうやって確保するのかってのが難しいんですよね。

―うん、単純な人材集積のプランとかありますけど、「強制移住かよ!」って驚くことがありますw

倉庫番さん:本当は「強制移住」と思われそうなものじゃダメなんです。本当にそのまちの事を好きになって貰わないとならないし、好きだからこそ言える色んな厳しい話ってのもあるって思うんです。あと、「よそ者」の利点って言うのは「外部の視点で内部を観察できる」って言うところなんですよね。

―そうですね。むしろ外部から人を招き入れて、内側の人のクリエイティビティを掘り起こして資源化するほうが時間はかかりますが、緩やかな右肩上がりは描けると思うんです。

倉庫番さん:それは私も同感です。確かに内部の人だけで話をするのであれば暗黙知が共有されている訳ですから話は楽なんです。でも、これから先「外部に打って出る」って言うことだと思うんですよね、浜松市が「創造都市」として名乗りを上げたと言うことは。
 そうなると、内部の人間だけでどうこう言うよりも、外部の視点を様々な分野に入れる事によって「自らを客観的に」俯瞰し、その中での自分たちの強さや弱さ、機会や脅威と言うものを冷静に分析する事が必要だと思うのです。

―創造都市云々の話より、今の都市に必要なのはそこだと思います。

倉庫番さん:都市間競争って言う事が一時期盛んに言われてましたが、どうも最近その話って言うのを聞かないんですよね、自分のアンテナが低くなってるのもあるかもしれませんが。ただ、それは「競争」と言う形ではあるのですが、何によって「競争」するのかと言えば、その都市の「価値」なんですよね。「価値」を高める事によって行政的には税収が増加し、様々な市民サービスに還元することができる。結局これから先は、その「価値」をどのように高めていくのか、もし高めるべき価値が無ければ、どのような「価値」を都市に付け加えていくのか、そこを戦略的に検討する必要があると思うのです。

―都市における価値、この言葉いいですね。全てを内包していますし。それが都市の魅力につながる。

倉庫番さん:今回のシンポジウムに求められているものは、今までの「産業集積」によって存在している浜松の「価値」と言うものを、更にどうやって高めていくのか、何によって高めていくのか、と言うことを議論し、一つの方向性の案を提示することなのかな?と思うところですね。

―そのとおりです。その中で今回は特に音楽に注目して、音楽の中ならデジタルサウンドの議論をすれば、そこが見えやすくなるかと考えたんです。

倉庫番さん:デジタルサウンド、って言うのは、それこそ「一つの状況」として捉えやすい分野だと思うのです。ただ、既存の音楽スタイルも決して消える訳ではないですから、この発想を如何にして水平展開していくのかと言うものもあるかと思いますし、地域の中にどうやってアリーナを作るのか、と言うのを考えるのも必要かなと思います。

―そうですね。これからの音楽の流れを考えると、場の意義が薄れていく、しかしその先にある新しい場の意義を見いだせるのなら、それは新しい都市の価値の創造になる。音楽産業の集積地浜松なら、音楽の話をまずはやらないといけないと思うんです。

倉庫番さん:折角の「(ハードとしての)音楽産業」があるのですから、まずはそこをスタートラインにすると言うのはいい方法だと思いますし、いろんな意味で想いのある人が多いかと思いますからね。そこから色んな「価値向上」を目指していく、と言うのがいいのかもしれません。

―ヤマハさんの事業展開のように音楽から始まる色々なことが出てくると面白いですし。しかしそのためには先ほどおっしゃられたリサーチや、外部から招く人の存在が鍵になる。

倉庫番さん:その通りだと思います。後は、そんな外部の人が「このまちに来て何かをやってみたい!」と思わせるような空気づくり、これが必要です。ヤマハにしてもカワイにしても、色んな「きっかけ」が今の事業展開を生んでいる訳ですし、それは何も「技術」だけじゃないって事なんですよ。「人」とのぶつかりもあれば「時代」もあるし。そんな部分を生き抜いてきた浜松っていうまちは、本当にまだまだポテンシャルを持っているまちだと思います。

―おー!内側にいるとネガティブになりがちなので、これは嬉しい!

倉庫番さん:あとは、地元の方がその「ポテンシャルの高さ」に気づいてくれて、「何とか自分らでしたいね!」って言う意気込みを高めてくれる事が必要かと思います。

―今日はお話し聞かせていただきありがとうございました!



倉庫番 ( twitter: @warehouse_mgr) webページ:http://d.hatena.ne.jp/warehouse_mgr/

静岡市清水区在住。
中小企業支援機関勤務の中小企業診断士として静岡県内中小企業の経営支援を本業としている。また、webページ「静岡の高速バス倉庫(http://homepage2.nifty.com/warehouse_mgr/ )」の管理人としても活動しており、日本国内の各所を巡りながら、それぞれの地域が抱える問題に対しての考察も行なっている。関心領域は「地域資源を活用した地域活性化」と「都市間中量交通機関を活用した地域活性化」。

好きな曲調は四つ打ちのポップサウンド。特にニコ動の「ミクノポップ」タグの曲がお気に入り。

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