デジタルサウンドインタビュー ―倉庫番 第2回―

山森 達也

2011年11月11日 20:59

倉庫番さんへのインタビュー第2回です。浜松の産業集積について前回は伺いましたが、今回はソーシャルキャピタル(社会関係資本)とそれが形成される場についてお話を伺いました。


―ソーシャルキャピタルと場の変化―

―しかし、今はどうなんでしょ?あの頃のベンチャー企業も、今じゃ大企業。

倉庫番さん:確かにそうなんですよね。でも、あくまでも個人的な感覚としては静岡県内ではやはり「起業意欲」って言うのは大きい都市だと思います。中小企業基盤整備機構の「浜松イノベーションキューブ」って言うのが静大の中にありますからね。 http://www.smrj.go.jp/incubation/hi-cube/index.html

―なるほど。

倉庫番さん:あと、支援機関の関係者の中で有名な都市伝説?があって、居酒屋で居合わせた人でベンチャー企業に出資するって言うのもありますからね。

―それって何に起因するんでしょう?ソーシャルキャピタルの視点からとか、そこらへん伺いたいです。

倉庫番さん:個人的には「報徳思想」って言うのがベースにあるのかと思っています。報徳思想は「一生懸命仕事をしよう」「無駄遣いをやめよう」「無駄遣いせずに貯めたお金を地域に還元しよう」って言う考え方があるんですね。それから派生して、浜松じゃないですけど、日本最古の信用金庫は掛川にあったりとか(掛川信用金庫)、今の静岡銀行の前身である「資産金貸付所」ってのも確か浜松にありましたからね。
そう考えると「報徳思想」と言うものが浜松地域における「ソーシャル・キャピタル」の根底にあるのかな?って考えるといろんな面でしっくりと来るんですよ。

―事実、静岡県西部ではまだ根強くあるようですしね。

倉庫番さん:元々静岡県西部地区じゃそんなに稲作に向いた土地が無かったりとかしましたし、そんな中で「相互扶助」的な考えが重要だったのかと思います。
 報徳社の目的は「殖産勧業のための知識交換会」的な役割を持っていましたからね。そんな中で棉種や稲種の交換をしたりとかしてましたから、地域コミュニティの中に「問題解決の仕組み」が出来上がっていた、と言うのはあると思います。

―なるほどー。これは3.11を経験した今にも効果が期待できるものなのでしょうか?

倉庫番さん:個人的にはそうあって欲しい、と思うのですが、現状の人口流動を考えるとどうなのかなぁと思う部分はありますね。ただ、被災地の例を見てもそうなのですが、「何かあった時にお互いに助けあう」って言うのはどこか根底にあるのではないかと思います。

―それはありますね。ただ産業構造の変化といったときには、むしろ足かせになるような気もするんです。つまり、発展を妨げるようなものになるのではないかと。だから変化のスピードに対応できないというのがある気がします。

倉庫番さん:ただ、それが「他所から来た人でも一緒にやろうよ!」って言うような意識があれば十分克服できると思うところはあります。そのいい例がヤマハさんなんですよね。ヤマハさんの創業者である山葉寅楠さんは元々和歌山の人なんですよね。たまたま医療機器の修理工として浜松で仕事をするようになったとき、学校の校長先生からオルガン修理の依頼を受けて、「何かこれって自分でも作れそうだな」って事を感じて浜松で創業した、って言う経緯もありますし。
 そう言う面では、浜松って言う所は「他所の人でも受け入れる」と言うオープンな空気があるのかな、と思いますし、何かやってみようと言う人を応援しようと言う気持ちがあるところなのかなと思います。

―なるほど、しかし今回のテーマでもありますが、場の意義が今薄れてきてますよね。オンライン上で仕事が可能。もうコミュニケーションですらそちらがメインになりつつある。

倉庫番さん:結局「色んな方向にあらゆるものがとんがっている」って言うのが現状なのかもしれませんね。趣味分野にしても、何にしても。「集まる」と言うか「場」と言うものの持つ意味、これを具現化させていく事が重要な気がします。実際、東京なんかはその「場」なんですけどねw

―うん、東京はその「場」ですね。無条件で色々なものが集積する。となると、中央集権化と別の意味で地方がさらに疲弊する可能性がありますね?

倉庫番さん:思いっきりありますし、その崖っぷちに立たされているのが実は今の浜松だけではなく、そこそこの規模のある地方都市なのではないかと思いますね。

(第3回「地域資源としての「人」、状況としての「デジタルサウンド」」に続きます

倉庫番 ( twitter: @warehouse_mgr) webページhttp://d.hatena.ne.jp/warehouse_mgr/

静岡市清水区在住。
中小企業支援機関勤務の中小企業診断士として静岡県内中小企業の経営支援を本業としている。また、webページ「静岡の高速バス倉庫(http://homepage2.nifty.com/warehouse_mgr/ )」の管理人としても活動しており、日本国内の各所を巡りながら、それぞれの地域が抱える問題に対しての考察も行なっている。関心領域は「地域資源を活用した地域活性化」と「都市間中量交通機関を活用した地域活性化」。

好きな曲調は四つ打ちのポップサウンド。特にニコ動の「ミクノポップ」タグの曲がお気に入り。

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